2006年11月20日月曜日

うかい鳥山


八王子近くの高尾山へ
先日、休みを利用して八王子の奥にある高尾山麓にある料亭、うかい鳥山まで足を運んだ。久しぶりにレンタカーでも借りようかと思ったが、連休中で道路は大混雑していたので、電車で行く事にした。路線情報で行き方を調べると、最寄り駅である地下鉄日比谷線六本木駅から大江戸線、京王線を乗り継いで約一時間半でたどり着けることがわかった。
うかい鳥山へは今から5年半前、僕が十仁病院で働き始めた頃、十仁病院の梅沢院長と一緒に行った事がある。それは米国から来ていたビジネスマンを接待する目的でこの地を訪れたのだった。梅沢院長が外国人をうかい鳥山へ案内したのは、ここが伝統的日本文化を経験するのにふさわしい場所と知っていたからだろう。僕が始めてうかい鳥山を訪れたときの印象は“随分、古風な雰囲気な場所、江戸時代の日本って、こんな感じかな?”というものだった。大きな庭園の中に離れがいくつも用意されており、この木造の離れは藁葺きの屋根から作られている。庭園は竹森からなり、至る所に水が流れており、その水の流れ込む池には見事な錦鯉たちが泳いでいる。日本人が昔から大切にしている緑、水、魚と言った要素が見事に調和している。
うかい鳥山は、夏に現れる蛍を鑑賞しながら食事をすることで知られているが、10月末のこの時期に訪れても自然を十分に楽しめる。紅葉まではまだ早かったが、秋の花、福寿草が見事に咲いていた。どちらかと言うと西洋かぶれ気味の僕には、いかにも日本的なうかい鳥山の雰囲気は、正直言うと余り好きではない。では、何故八王子の奥にあるこの料亭にまで、わざわざ足を運んだかと言えば、やはりその料理の味が忘れられなかったから。鳥山と言うだけあって、ここの地鶏の炭火焼は絶品と言える。どうやらここを訪れるほとんど全てのお客さんがこのメニューを食べにくるらしい。

ハイテク化した料亭、うかい鳥山
朝に予約をした時点で個室の席は満席になっていたので、大部屋の相席を予約した。時間より早く着いたので、庭を散歩していると、離れの部屋はお見合いなどの行事の為に着飾った家族たちが宴を催している真っ最中であった。予約時間になると、僕を含めて8グループくらいのお客の名前が次々に呼び上げられた。その数、総勢30名近くが母屋から少し離れた大きな家風の離れに連れてゆかれた。先頭にいた僕は案内の女性に「うかい鳥山には全部で何人のお客さんが入れるのですか?」と尋ねてみた。女性は「約500名が一度に収容可能です。」と答えた。僕は「へーっ、凄い数の人が入れるんですね!」と返事を返した。と同時に、“意外にこの料亭はハイテクかもしれない。”と感じた。何故なら、予約システムは全てコンピュータ制御、メニューはバリエーションこそあるものの、途中までの前菜は全て一緒、僕はピンときた。“そうか、グループ単位である程度の時間制にしているし、ほぼ同じメニューなので、効率よくお客さんを回転さられるのか。”と。純日本的な雰囲気の裏で、徹底したシステム管理が施され、高収益を上げていることが手に取るようにわかる。
美味しい食事も終わりに近づいてきた。僕は着物を着た給仕の女性に、「この料亭はいつから営業しているのですか?」と尋ねた。女性は「昭和39年、東京オリンピックの年に開店して以来、42年になります。」と答えた。どおりで十仁病院の梅沢院長もこの料亭を良く知っている訳だ。うかい鳥山はその後、着実に経営し、現在までに銀座を始め、関東近辺に10店舗以上の支店を出している。その成功の陰に日本古来の伝統文化のみならず、これも今や日本的と言えるだろうが、ハイテクの駆使されたシステム管理の存在を僕は見逃さなかった。