2005年10月12日水曜日

診察日記−3

意外に多い美容に関する目の周りの悩み
目の周りの脂肪組織は何故存在するのか?
僕のクリニックで積極的に治療しているものの一つに目の下の過剰脂肪除去がある。目の下のくまやたるみの主な原因である脂肪を取り除くことで、くまやたるみ、しわなどの悩みから解放される治療だ。目の周りに関する女性の美意識はとても高く、これらの悩みを改善するためのアイクリーム等のものに費やす支出は相当だ。最近ではいわゆる‘目ぐま’を解消するサプリや飲み物まで発売されている。誰しもが最初から僕のクリニックで行うような外科的治療を望んではいない。出来れば化粧品やエステでおこなうスキンケアによって解決したいと考える。しかし、かなりの努力をしてみたもののあまり効果がでないためあきらめてしまう人が少なくない。
これらのスキンケア治療で効果が出ないのは仕方がない。目の周りのくま、たるみの大方の原因が皮膚の奥深くに埋もれる目の周りの脂肪が原因だからだ。この脂肪組織は相当深い所に存在している。目の下の脂肪が多い人だと表面から触ってみると、クッションのような弾力性でふわふわしているのがわかる。人間に備わった五つの感覚器官の中で、目から得る情報は最も重要だ。人間が関知する全情報の8割が目から得られる情報なのだ。太古の昔からこの最重要情報器官である目が守られることが獲物を捕ったり、敵から逃げて生き延びられるかどうかの決め手だった。人間が狩猟民族だった頃、獲物を追う間に頻繁にケガをしていたことは容易に想像出来る。目の周りの脂肪は目を衝撃から守る重要なクッションとなっていた。現代ではよほどのことがない限り目の周りをケガすることはない。顔面外傷の原因といえば交通事故が代表的だ。シートベルトをしないで、エアバッグの装備されていない車に乗るのであれば、目の周りの脂肪を取ることはお勧めできない。しかし、それ以外の場合であればよほどのことがない限り、顔をケガすることはないので目の周りの脂肪は必要ではないことになる。
もう一つの脂肪の重要な役割は脂肪の保温効果だ。大昔、我々の祖先が大陸に住んでいた頃、寒さから身を守ることが生命維持に取って重要だった。モンゴル人が今でも目の上下に厚い脂肪が存在するのは目を寒さから守る必要があるからだ。我々日本人にもモンゴル系の遺伝子が多く存在するので、目の下に脂肪のある人が多い。だが現代社会では、もはや目を寒さから守る必要はなく目の周りの脂肪の役割はない。

目の周りの悩みからの解放
このように、衝撃や寒さから目を守るために存在しているのだが、美容的にはやっかいものなのだ。この脂肪の中に目が埋もれていると目が小さく見えるし、年齢とともにたるみとなって、より老化を感じさせる要因となる。脂肪がないと、いくつになっても目の下のたるみがないし、目が大きく見えるのだ。目の周りの脂肪除去治療を終えた多くの患者さんたちが、治療直後にっこりと微笑み、まるで長い間の呪縛から解放されたように「あーすっきりした!」と言ってくれる。この一言が僕にとってこの上ない喜びとなる。患者さんたちは自分の治療を終えると、他人の目の下のくまやたるみが急に気になるらしい。彼女たちは電車で向かい合った人たちの顔を見て、多くの人たちの目の下に過剰脂肪があることを理解してくれるようになる。
このようにいわゆる美容整形というより、アンチエイジングのための美容治療を当クリニックでは積極的に取り入れている。僕も5年ほど前より自分の目の下のくま、たるみが気になりだしていた。その悩みは年々強くなり、毎日鏡を見るたびに堪え難いものになった。つい先日、意を決して自分自身も患者となったので、次回はその経験を述べる。

0 件のコメント: