2005年10月13日木曜日

診察日記−4


目の下のくま、たるみ治療の具体的方法
目の下のくまを治療するには前回までに述べたように、目の下の過剰脂肪を取れば除けば良い。その取り方にはさまざまあるが、従来まで下睫毛から1、2ミリのところで皮膚を横切開して脂肪を取る方法が一般的だ。僕もかつて働いていた美容外科クリニックでは、この方法を用いて治療を行っていた。しかし、この方法には皮膚の上から切開することで大切な顔に傷をつけるのだ。熟練した美容外科医が行えば、この傷跡は数ヶ月後にほぼわからなくなる。しかし治癒するまでの数ヶ月は傷口が赤く腫れ上がり、この治癒期間は避けては通れないのだ。特に治療後一週間は腫れが明らかだし、縫合糸がついているので眼鏡かサングラスをかけなければ人前に出ることができない。さらに、この治療法には致命的な欠点がある。この治療で脂肪のみならず目の下のたるんだ皮膚をの切除量を間違えると、いわゆる‘あかんべー’の状態になる危険をはらんでいるからだ。この治療を受ける患者さんには常にこのリスクを話して納得してもらう必要があった。これまで僕はこの治療をさんざん行ったものの、いつも‘あかんべー’にだけはしないように細心の注意を払う必要があった。結局、そのような事態に陥ることはなかったが、この治療を行う際に僕にもの凄いストレスを与えた。
では、目の下のくまやたるみはどのように治療を行えばいいのだろうかといつも悩んでいたが、人目につかない所を切開する美容外科の常識に従えば良いのだと思った。日本の美容外科の歴史は少なくとも70年近くある。鼻を高くしたり、目を二重にしたり、あごを前に出したりとさまざまな方法が開発されたが、一般的になった手法はすべて人目につかない所で切開を加えるものだ。目の下のくま治療では目の裏から切開して脂肪を取り出す方法が従来から存在していた。しかし、なぜかその方法はあまり一般的でなかった。僕はクリニックの先輩から教わってこの方法を試みた。表面から切開を加える治療よりは明らかに良さそうだった。一般的でなかったのは下瞼をひっくり返しながら治療するので、操作が煩雑なのと取り除く脂肪量を調節するのが困難だったからだ。なんとかこれらの欠点を解決する方法がないか僕は悩んでいた。

米国人医師から学んだ画期的治療法
ある時、韓国美容外科学会に出席した。ほとんどの発表が韓国語で行われたため、何をやっているのかチンプンカンプンだった。外国人は日本から出席している僕と米国から招待された医師のみだった。韓国語が通じないので、この米国人医師と英語でコミュニケーションをとることができたのでほっとした。学会中にこの米国人医師によるライヴ治療が行われる予定だった。この学会の主催者である韓国人医師から、英語がわかる僕がこの治療の助手をするよう頼まれた。治療内容は米国で開発された最新のフェイスリフトと目の下のくま治療だった。僕は興味深々でこの治療の助手をした。手術の模様は数百人集まる学会場に中継で放映されていた。執刀医の米国人医師は今何を行っているか耳からつり下げられたワイヤレスマイクに話しながら手術を行った。その説明を聞きながら手術の助手をしていた僕は誰よりよく勉強することができた。目の下のくま治療に関しては、それまで僕が悩んでいた問題を見事に解決する方法がとられていた。僕は「これだったのか!」と思わず心のなかで叫んだ。
日本に帰ってきてからこの方法をビデオで何度も見て勉強した。煩雑な手技もいくつかのポイントを押さえると問題なく行えることがわかった。脂肪を取る量もレーザーを用いて治療し、脂肪に到達する方法を変えることで調節出来ることがわかった。技術を習得してからこの方法を実際に日本の患者さんに行うと、非常に良い結果が出ることがわかった。それから現在に至るまで、500例近くの症例を経験して、目の下のくまに対するこの米国式治療を完全に身につけることができた。

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