2006年9月26日火曜日

当クリニックの最近の傾向


“目の下の治療”に対する分析
早いもので開業してからはや1年半が過ぎようとしている。当クリニックもこの期間の間に随分とお客様に認知され、僕一人で全ての診療を担当していることもあり、今や治療は一ヶ月半待ち、カウンセリングは約一ヶ月待ちの状態となっている。この傾向は僕の行っている治療方針に大筋間違いのないということを示す、良い兆候と考える。しかし、僕も人間なので常に完璧な治療を行えるというわけでもない。例えば、開業以来、今年の8月までに目の下のくま、たるみ治療の治療を受けた方のアンケートの集計を行ったところ、7割が“大変満足。”、“2割がほぼ満足。”、1割が“どちらとも言えない。”もしくは“やや不満の残る。”との結果が得られた。この1割の“やや不満の残る。”と答えた方に「その理由は?」と尋ねたところ、“治療後の腫れ、黒ずみ、皮膚の段差が気になる。”との事だった。この1割の方に追跡調査を行ったところ、これらの大半の問題点は1〜3ヶ月間に解決していた。全体の9割の方がこの治療に対して、大方価値があるとの評価を頂いた。医療において9割の方々が満足する治療である場合、それは非常に価値があるのは紛れもない事実で、この治療を推奨する僕としても大変誇りに思う。

どんどん増える患者さんたち、“困難な症例”の増加
気がつくと、このクリニックでも目の下のくま、たるみ治療は毎月100名余りの治療を行っており、開業以来、あっという間にこのクリニックで症例数は1000名を超えた。その中で、当クリニックの為に症例写真のモデルとなってくれる方も毎月一人は増え、今年度中に後3人は増える予定である。僕もこの目の下の治療を毎日4−5人治療していると、技術的には完成されたと自信を持って宣言できるレベルに達した。その証拠として、最近、当クリニックを訪れるお客さんの中に他院で目の下の治療をすでに数回行った方々の来院が急速に増えだしている。正直に申し上げると、目の下の治療は回数が増えるほど、瘢痕と呼ばれる組織が増えるため、技術的に困難となる。そのため、そのようなお客さんがいらっしゃると、僕も「どうすべきか?」と悩むことが少なくない。当然、治療を行うからには現状以上に良い状態になることが予想されるのでなければ、治療に踏み切るべきではない。しかし、患者さんが僕の治療に最後の望みをかけて期待してくれている限り、そう簡単に断るわけにも行かない。この治療を自信を持って提供し、日本で一番目の下の症例数をこなしている僕としては、出来る限りのことをすべき立場にいる。そして、これらの難しい症例をこなしてこそ、“その道のプロ”として生きてゆけるのだ。プロのスポーツ選手を見ると、まさにそのお手本となる。イチローや松井選手も簡単にヒットを打つように見えるが、相手の投手は常に手元で変化する癖玉を投げてくる強者だ。直球あれば、ヒットを打てたとしてもプロとしては通用しない。あくまで、このような癖玉をヒットに出来てこそ、“プロ”と言える。つまり、僕の場合、他でうまくいかなかった症例うまく治療できてこそ、この治療のプロとして認められる。そういった意味で、これからが正念場と言える。

完成域に達した治療技術
困難な症例に遭遇することが増えるにつれ、この治療を初めて受ける方々の治療の結果がさらに安定するようになった。難しい症例をこなすことで、僕の技術が向上し、通常の症例であればいとも簡単に行えるようになったということである。毎日この治療を一年半行い続け、結果が良くなければ悪評が立ち、患者さんたちの足は遠のいていたであろう。また、僕自身に才能が無いと判断し、この治療をあきらめていただろう。しかし、ここまで治療経験をこなして、初めて揺るぎない自信を持つことが出来た。逆に言うと、この治療がいかに難しいかということを示している。なぜなら、外科医として10年間トレーニングしてきた僕が、油の乗っているこの時期にこの治療を1000件以上こなして、ようやく完成したと実感できたのである。つまり、付け焼き刃的にこの治療を体得するのは不可能である。

治療後の腫れの本当の原因は?
では、先ほどの得た治療結果の満足度にややばらつきがあるのはどうしたわけだろうか? それはこの治療を行う僕の技術のばらつきではない。常に片目の15分、合計30分の全く同じ完成された治療を行っていても、それを受ける患者さんたちの健康状態によって、結果が異なることがわかった。
まず第一の要因として患者さんの年齢が挙げれられる。僕のこの治療経験では最年少で16歳のから最高齢で80歳までの年齢差がある。当然、若ければ若いほど回復力は良く、腫れや赤み、しばらく現れる皮膚の段差(へこみ)等がほとんど起こらない。それは若い人にはコラーゲン、ヒアルロン酸などの弾力性が優れているため、ゴムのように縮み易いからだ。僕がこの治療を若い人に行うと、そのことを治療中に常に実感する。20代前半の患者さんたちの場合、レーザーで脂肪除去して、その後血を止める操作をしなくても血管に弾力性があるため、勝手に縮んで血が止まるからだ。このような患者さんたちに内出血などの赤みが起こる可能性はほぼ0%に近い。腫れやむくみ、皮膚の段差(いわゆる“へこみ”)が起こる期間も数日程度である。
逆の例を挙げてみよう。40代独身男性一人暮らし、食事は毎食コンビニ弁当で、血圧を測ってみると、180/100の高血圧、糖尿病の傾向ありでコレステロールが高い。タバコは一日30本、毎日焼酎一本を空けるとのこと。身長170cm、体重100キロ。こういった患者さんが目の下のたるみ治療に来ることもある。僕としては治療後の腫れが長引く可能性があるので、正直言って断りたい症例だ。僕は患者さんには「せめて、タバコだけでも辞めてから治療を受けることを考えてみてはどうでしょうか?」と伝えるものの、患者さんは「多少の腫れは覚悟していますから、是非治療を受けたいのです。」と言われ治療を引き受けることとなる。
では治療中の差は先ほど説明した20代前半の健康な症例とは雲泥の差となる。レーザーで粘膜を開け始めた途端、血が滲み出る。血管の弾力性がコレステロールの沈着で全く失われている。点滴からは降高血圧薬を点滴しているものの、血圧は150/90と高めのため、血が止まりにくい。脂肪を取り出すためにレーザーで切り取り止血操作をしてもなかなか血が止まらない。通常ではどんな場合でも2回止血すれば完全に止まるがこのような症例では3回目でも完全には止まらない。当然治療後の内出血の可能性は当然高くなる。このように、同様の治療でも、その方の健康状態によって結果が大きく異なる。

治療後に問題が起きる典型的なケース
ある時、40歳の女性の治療をいつものように完璧に終えた。翌日患者さんの顔を見ると両目の下がやや赤くなっている。患者さんは「どうして、私はこのような結果が出たのでしょうか?ホームページの症例写真ではみんな翌日には赤みは出ていないのに。。。」と僕に訴えた。僕は技術的に全く否が見当たらなかったので、患者さんに詳しく問診を繰り返した。僕はその患者さんに「本当に今まで、体に異常を認めたことはありませんでしたか?どんなちっぽけなことでも良いから思い出してください。」と問いかけた。患者さんは「そういえば、この前、献血に行ったときに、献血を拒否されました。血液の比重が足りなく、極度の貧血あると言われたのです。何か今回の事と関係がありますか?」と言った。僕は思わず「それは大有りです!どうして、それを治療前に言ってくれなかったんですか?」と口から出た。なぜなら、そのような貧血がある場合、当然、血小板と言って、血液を固める成分も少なくなっているため、血が止まりにくい。点滴を行った腕を見るとそこにも内出血の後が見えた。これではどんな名医が治療を行っても、赤みが出るのは当然の結果である。このように、腫れや赤みなどの治療後の結果に差が出るのは僕の技術力ではなく、患者さんたちの健康状態に強く影響される事がこの一年半の治療結果の分析によって判明した。

美容医療が良い方に循環するとは?
このように患者さんの症例数が増えると、より適切な治療が行える。なぜなら、美容医療もビジネスであるから、日々の売り上げをたてる必要がある。しかし、当クリニックのように安定して患者さんがいらっしゃると、売り上げを立てる目的で強引な治療を行う必要が無い。治療の必要の無い方、今ひとつ治療の価値をおわかり頂いていない方々には治療を行わないという余裕が生まれる。治療を受ける必要のない方々に僕ははっきりと、「もう一度冷静になって、この治療を受けるべきかどうか考え直してください。他院でセカンドオピニオンをお聞きなってみてはいかがですか?」と患者さんの事を第一に考えた答えを与える事が出来る。信頼関係の築くに至っていない患者さんたちを強引に治療して、満足して頂けない結果を出していやな思いをする必要はない。一ヶ月半前からこの治療を首を長くして待たれている、この治療の適応のある患者さんたちが次から次へといらっしゃるから、強引な事をしなくて済む。

僕自身の深刻な悩み
僕の今の一番の悩みは僕自信にこの治療の適応があるにもかかわらず、自分がこの治療を受ける事が出来ないこと。僕は僕自身に治療を施す事だけはどうしても出来ない。しかし、この治療を行えるのは僕しかいない。このジレンマは全く救いようが無い。唯一考えられるのは才能のある医師を発掘して、最低でも500例は僕の監視下でこの治療を習得させて、「うん、これだったら大丈夫だな。」と判断してか僕の治療をしてもらいたい。残念ながら、現在までそのような才能の持った医師を発掘することすら出来ていない。当分僕はこの治療を受ける事が出来ないと思うと、絶望的になる。僕の患者さんたちがうらやましくてしょうがない。僕も、僕の患者さんたちのように目の下のたるみのない、皮膚がリフトアップされた目になりたくてたまらない。俳優の玉木宏さんのような目になりたくてしょうがない。僕の美意識は計り知れなく高い。

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