2006年9月2日土曜日

アンチエイジング診療の外‐26(英国で行われたアンチエイジング・セッションに参加して。)


強行スケジュールで英国へ
土曜日の診療が終わってから、午後11時出発、エールフランス・夜行便でパリまで12時間、その後乗り継ぎ3時間待ちで、ロンドン・ヒースロー空港までの長旅となった。夜行便だというのに、週末のせいか機内は満席だった。企画旅行とあって、座席はエコノミークラスだった。運悪く両隣に挟まれて、12時間動くことも出来きなかったのは、まるで拷問のように感じた。なんとかパリ・ドゴール空港に着いたのは現地時間の朝4時過ぎだったが、ここでまた3時間待つこととなった。そもそもこのような、不便な便を乗り継ぐことになったのは、何としても日曜の午後にロンドンで行われる、本年度最初の英国プロサッカー、プレミアリーグ、チェルシー対マンチェスター戦を観戦するためだった。この旅行の約一週間前にヒースロー空港から米国へ飛び立つ飛行機に対するテロ未遂事件が発覚した。その影響もあって、空港の持ち物検査、身体検査では厳戒態勢で望んでいた。機内に手荷物として持ち込もうとした目薬と歯磨き粉も、あえなく没収されてしまった。何しろ今回のテロは2種類の液体やペースト状のものを混合させて光に反応させ、爆発させるというものだったから、疑わしいものは全て没収されてしまうことになった。テロリストたちの狙いは飛行機を爆破するというよりも、英国、米国社会を混乱させる目的で行うらしい。確かにこの爆発未遂のおかげで、飛行場は大混雑を来していたし、多くの人々が旅行をキャンセルするはめとなった。このテロ未遂のおかげで、英国はただならない経済的損失をした。その意味でテロリストたちにとって、この飛行機爆破未遂は大成功と言えるのだろう。

物価の高いロンドン市外
ヒースロー空港からは地下鉄でピカデリー・サーカス駅まで40分の道のりで、ようやくロンドン市街にたどり着く頃はもうくたくただった。ホテルはハイドパークの近くに位置する、いかにも英国調の伝統的なたたずまいだった。行動を開始する前に円をポンドに換金したが、あまりのポンドの高さに驚いた。一ポンド230円もするのだが、タクシーで5分くらい走ると簡単に10ポンドくらいの料金となる。つまり、日本でワンメーター、600円くらいの距離を走っただけで、英国では2300円もかかる。しばらく行動するうちに、大半のことに日本の約2倍の料金が必要であることがわかった。驚いて同行した知人にそのことを尋ねると、英国は世界で一番物価の高い国であることを知らされた。英国は昔から世界を支配してきた大国だけに、ポンドの価値が高く、どこへ行ってもポンドを持ってゆけば裕福に暮らせるようになっているのかもしれない。サッカーの試合はついこの前のワールドカップで活躍した名選手たちを目の前で見ることが出来た。日曜の午後、パブでビールをいっぱいひっかけた後、サッカーに熱狂するのが英国一般市民の楽しみ方なのだろう。僕たちも彼らに見習って、サポーターにまぎれて昼からパブでギネスビールを飲みながら、試合を観戦することになった。翌日はロンドン郊外まで、アンチエイジングの会議に参加するため朝早くタクシーでホテルを出発した。僕は歴史はあまり得意でないが、何世紀にも渡って継承されてきたエリザベス女王家の遺跡をこの英国郊外の土地に見ることが出来た。

英国アンチエジング医療の内情
肝心のアンチエイジング医療だが、一般的に保守的と言える英国人にとって、外科的治療はさほど発達していない。今回の目的は内科的アンチエイジング医療の最先端情報を得るためのものだった。僕たち一行が訪れたのは英国オックスフォード大学卒業の薬学博士の経営するサプリメント会社だ。英国も日本同様、国民皆健康保険制度を導入していて、医療費の効率化に事欠かない。そうなると当然予防医学が重要となるので、内科的アンチエイジング治療はかなり進歩している。いかに病気にならないかが大切で、病気になってから直すという発想はもう古いし、効率が悪すぎる。
では何故、人は病気になるのだろうか?具体的な質問を社長のフィルに投げかけてみた。「病気を引き起こす原因には遺伝子レベルの先天的なものと、悪い生活習慣が原因の後天的なものがあるのです。少なくとも後天的なものは予防できます。」僕は当然だと思ったが、「ではどのように?」と続けると、フィルはすかさず「デトックスです。」と答えた。僕が予想していた通り、デトックスの重要性は英国でもすでに認識されているらしい。
要約するとその重要性は次のようになる。近代工業が発達する中、人々は石炭石油を燃やし始めた。当然そこからは水銀、鉛などの有害重金属がまき散らされる。それらは風や海流によって世界中のどこにでも流れ出す。16世紀くらいからその傾向は始まり、その頃の人体にすでにこれらの有害物質が溜まり始めた。これらの有害物質が体にたまることが、癌、痴呆などの神経病、アレルギーなど多くの病気の原因に関わるとフィルは説明した。

英国でも認識されているデトックスの重要性
医者は常に病気になった患者がスタートに立つから、病気を直すことからしか考えない。しかし、フィルのような薬学博士は病気の原因を考える習慣があるからこのようなことに気がつく。僕は自分自身のデトックスに対する考えをフィルに次のように伝えた。「僕はフィルターに通した水しか飲まないようにしているから、体の中はきれいだと思います。」フィルはにこっとしながら「それだけでは足りません。あなたは毎日シャワーを浴びますか?」と尋ねた。僕は「もちろん。」と答えると、フィルは「7分以上のシャワーを浴びると、コップ7杯の水道水を飲んだのと等しい量の蒸気化した有害物質が体の中に入ります。」僕は唖然とした。「いくらきれいな水を飲んでいても、それじゃ意味ない。」と思いつつ、フィルからもっとたくさんの話を聞きたいと思った。
フィルはこれらの有害物質の根本原因がどこにあるかについて、興味深い話をしてくれた。米国東海岸で水銀中毒で死んでいた水鳥の水銀汚染の原因を調べるため、その水銀の出所を、調べたところそれはなんと中国の化学工場から排出されていのだ。これらの有害物質はどんなに避けようとしても地球上にいる限り避けられない現実がある。これらの有害物質を人体は骨の奥に蓄積しようとする。毒物は骨の中に封じ込めると安全なので人体の持つ毒物に対する防御反応と考えられる。フィルは僕に「最近、英国で骨折で一命を落とす老人がおりますが、その死因が何かわかりますか?」と尋ねた。僕が悩んでいると、彼は「骨の中から出てきた毒物の量があまりにも多く、その毒物による中毒死なのです。」という、恐ろしい事実を語った。その他にも電子レンジを用いて沸かした水とそうではない水とで植物を育てると、電子レンジで沸かした方の水では植物が良く育たないということも教えてくれた。この原因はまだ解明されていないが、どうやら水の周波数が変化するらしく、それが生物には有害なのだと言う。このように、便利なものが実は健康を犠牲にしていることが世の中に実に多いということを彼は述べたかったのだろう。

健康に生きるためのシンプルな原則
ではとりあえず、健康的に生きるためにはどうすれば良いのだろうか?僕は次のような答えを出した。
1. 車など使用しないで、出来るだけ歩いて運動不足にならないようにする。
2. 携帯電話、電子レンジなどの便利な物も最小限の使用とする。
3. きれいな水と出来るだけ汚染度の少ない食物を食べる。
4. 睡眠を十分にとり、ストレスを減らすことで免疫力を高める。
5. デトックスと必須マルチ・(ビタミン、ミネラル)サプリを一生涯摂取する。
これらのアンチエイジングに対する考え方は極めて一般的であるが、普段の忙しい現代人にとってはついつい見逃されがちなと言える。アンチエイジング医療の先進国、英国を訪問して、健康に生きるためのこれらの必須事項を改めて認識することになった。

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