2006年2月28日火曜日
女性について−4
美容外科学会に参加する意義
美容外科学会に参加すると最新の美容医療についてのテーマがことの外多い。最近の話題はなんと言ってもメスを使わない美容治療がもてはやされている。美容医療の進歩はとても早く、新しいタイプの治療法が次から次へと出てくる。我々美容外科医も学会に出席して、本当に価値のあるものを見極めなければならない。
これらの学会では過去に業績のある医師の中から、記念講演みたいなものが必ずある。ある時出席した上海の学会で、フランス人美容外科医、フルニエ医師の講演を聴いた。彼は“現代美容医療の父”と呼ばれる輝かしい業績がある。脂肪吸引も彼ら美容外科の創始者たちによって世界で初めて行われた。最新の美容医療に関する発表が続く中、フルニエ医師の発表は一風変わっており、“女性の魅力とは何か”についての発表だった。
二タイプに別けられる女性の顔の魅力
そもそも女性の顔の魅力とは何かと一口で言うにはとても難しい。フルニエ医師は講演の中で、女性らしい魅力を美しさと可愛らしさは別のもとであると述べた。美しい顔立ちとは彫刻のような均整のとれた顔立ちを表す。例えば、顔立ちにはいわゆる‘黄金律’という、美しいバランスがあって、“黄金律”に従っていることが美しいとされる。西洋美人はこの‘黄金律’に従った顔立ちのことを言う。しかし、このバランスのとれた顔に欠点がないわけでもない。バランスのとれた顔は発達していて大人っぽく見えることが多い。つまり、目、口が大きく鼻が高い美人となり、完成された感じの美人となる。例えてみると、ミロのビーナスのような堀の深い顔だ。このような顔立ちの女性は、十分美しいのにもかかわらず、さらにきれいになりたいと言う。しかし、このタイプの女性を、美容外科的にそれ以上、美しくすることは不可能に近い。このタイプの女性が、美しさとして求めているのは、次に述べる“可愛らしさ”の場合が少なくない。
では、“可愛らしさ”とは何を意味するのだろうか?「あの子、可愛いよね。」と呼ばれると、それは美しい顔立ちのことを意味しない。いわゆる‘美しい顔立ち’が発達した、もしくは大人びたことを意味するのに対し、‘可愛いらしい顔立ち’の特徴は幼さの残る、いわゆる童顔のことを言う。童顔が何故、可愛らしいかと言えば、赤ちゃんや幼い子供のように見えるからだ。童顔の特徴は額が大きい割に、鼻、口、あごなどがまだ未発達な所だ。口やあごなどが未発達であることを、動物学的に解釈すると、その個体が自分自身で食べ物をもりもりと食べることが出来ないことを示す。つまり、このタイプの顔立ちは、幼いもの、弱いものを守ろうとする人間の保護本能をくすぐる。例えば、“キューピーちゃん”や“ミッキーマウス”などのマスコットは、“可愛らしさ”の持つ、未発達な特徴を有しており、万人から愛されている。
日本人に生まれた幸運な女性
東洋人の美しさの基準には後者に述べた、この可愛らしさが織り込まれている場合が多い。現在人気のある芸能人たちも、美しさよりも可愛らしさの比重が高い。東洋人が西洋人に比べて、実際の年齢より若く見られるのも、この“可愛らしさ”が作用しているからだ。本来、女性は守られる立場にあるので、“可愛らしさ”が際立っていると、男性からはとてもモテるのだ。日本人女性は世界の中で、この“可愛らしさ”が最も備わっている女性なので、今や世界どこへ行っても人気がある。
二つの魅力は同時に手に入らない理由
美容外科にくる女性の美意識が相当に高いことは簡単に想像出来るだろう。これらの女性の中に次のようなことを要求する女性がいる。「先生、鼻筋を通して顔立ちをきれいにしてください。そして、若々しくて可愛らしくしてください。」と。しかし、この女性は先ほどまでに述べたように、美しさと可愛らしさ(若さ)は相反するものであることを理解していない。どちらかを追求すればどちらかを失うことになるので、そこが美容外科医の美的センスが問われることになる。あくまでも、その女性の美しさを最大限に発揮するためのバランスを整えることが大切となる。
美容外科として理解すべきこと
このような話をフルニエ医師から聞き、目から鱗が落ちる思いだった。とかく我々医師は、技術的なことばかりを追求するあまり、自分たちの行っている行為の本筋を見失うことが多い。最先端の技術を求めるのも大切だが、“女性の魅力”とは何かを知ることの方が、優秀な美容外科としてさらに重要な要素となる。そんな僕も、美容外科を志した当初は教科書ばかり読みふけっていたが、ある時十仁病院の梅沢院長に「お前、そんな教科書ばかり読んでないで、銀座の街を歩いて、どんな女性が魅力があるのかよく見てこい!」と、どやされたことがある。その当時は「教科書を読むより、街で女の顔を一人でも多く見る方がどうして大切なのだろうか?」と耳を疑ったが、後年美容外科として一人前になるには、“女性の魅力”とは何かを知ることが、ことの外大切であると知った。
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