2005年11月16日水曜日

アンチエイジング紀行 1


先日、日本臨床抗老化学会の招きにてタイ王国、バンコクで行われたアンチエイジング・カンファレンス及び病院視察旅行に行った。週末を利用した2泊3日の強行スケジュールだったが、同学会事務局長の岡野氏と土曜の昼過ぎから出かけた。開業医の僕は日々の診療に追われる毎日なので、休日を利用した旅行は体力的にはきついのだがこの上ない気分転換となる。飛行機に乗るやいなやビールとワインをたしなむと、あっという間に眠りに落ちた。気がつく頃には飛行機はもう、バンコクの近くまで6時間半の航路を終えようとしていた。バンコクには夕刻についたが、空港の外に出ると立っているだけで汗が出てくるほど暑かった。

旅行ガイドの紹介で、バンコク市内のホテルにタクシーで向かったが、その道は土曜の夜のせいもあり大渋滞だった。ガイドに聞くとバンコクの交通事情は世界の中でも悪名高いらしい。車は大半が日本車だったが、日本価格より2倍近くしているにもかかわらず、車の数は増え続けているとのことだった。何しろ車以外これといった交通手段がないことと外で自転車を乗ったり歩いたりするには暑すぎることが車の数が増える原因らしい。食事は海鮮中心のタイ料理を食べに行ったが、日本で食べたことのないようなプリプリのエビをスパイスソースにつけて食べると、汗がどっと出てきたがその味は格別だった。タイの物価は安く、日本では少なくとも一人一万円はかかるような、美味しい料理が千五百円くらいで食べることが出来た。
その後、夜のホテルまで帰る前に夜のバンコクの街を散策したが、街はエネルギッシュで深夜を超えても一行に人の数は減らなかった。何時になってもビニールハウスに入ったような温暖な気候が人々をそうさせるのかもしれない。バンコク市内の人口は1,200万人だが人々はいたって陽気だ。経済的には決して豊かな国とは言えないが、バンコク人たちの明るさと笑顔はとても印象的で、残念ながら今の日本で失いかけている大切なものであることを気づかされた。街には野良犬たち、中にはかなりの大型犬までがふらふらと歩いているが、保健所も積極的に駆除しようとしないらしい。なんと言ってもタイは仏教国で人々は慈悲深いので無駄な殺生はしないのだ。

翌日のカンファレンスは朝8時から始まるので、ガイドさんの知っているパブによって帰ることにした。日本と違ってタイではチップを渡す文化がある。パブの入り口には何のためにいるのか分からないのだが、大勢の若者たちがオレンジ色の制服を来てたむろしていた。パブではタイの若者がライブ演奏を行っていたが、かなりエネルギッシュであった。夜もふけたのでそろそろ帰ろうとお手洗いに立ち寄るとそこには例の制服をした若者たちがたくさんいた。用を果たそうとしていると、いきなり肩に暖かいおしぼりを当てられた。一瞬びっくりして用を果たそうとしているのに、果たすことが出来なくなってしまった。暖かいおしぼりの後には肩のマッサージが始まった。手を洗おうとすると今度は手を取って洗ってくれた。次はおしぼりで吹き出した。一つ一つの行動に一人一人の若者が関わっていたのだが、目的はチップだった。タイの通貨はバーツだが、1バーツは3円程度である。円の価値はバーツの5倍くらい高いので、チップとして20バーツも渡すと日本円では300円くらいになるので若者たちは喜ぶのだ。一人の若者に渡すと、先ほど僕にサービスをした連中から次から次へと現れ、結局5、6人にチップを渡すこととなった。外に出ようとするとさらに大勢の若者たちが僕たちに近寄ってきた。早速気前の良い日本人として彼らの間で僕たちの情報が入ったのだろう。ほろ酔い加減の僕たちは「まあ、いっかー。」という感覚で来る若者たちに20バーツづつ、渡すと大喜びしていた。日本円で60円でこれほどよろこんでくれることに、むしろ僕たちの方が嬉しかった。もうチップがなくなったので、タクシーに乗って帰ろうとすると今度は、深夜を過ぎているのに写真に写っているインド系の小さな子供たちがバラを売りにやってきた。もう20バーツがなくなった僕たちはどうするか迷ったが、一人に100バーツづつ渡すことにした。彼女たちは微笑みを返してくれた。多分後ろには親たちがいて、僕たちの同情心をくすぐってチップを集めているのだろうが、この子たちの可愛らしさをみるとそんなことはどうでも良いと思った。とにかく笑顔がこれほど人を和ましてくれることにバンコクの一夜で気がつかされた。
次回はタイの病院事情について述べる。

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