2007年6月11日月曜日

第92回日本美容外科学会に参加して


切るか、切らないか?
5/12,13日に四国松山で開かれた第92回日本美容外科学会に参加した。日本美容外科学会は十仁病院が45年以上前に作った。松山は夏目漱石の小説“坊ちゃん”の舞台となったことで有名な四国で一番大きな都市である。四国を訪れるのは初めてで、日本最古の温泉として名高い道後温泉に宿泊した。土曜日の早朝朝松山入りしたが、街の雰囲気は大都会にはないほのぼのとしたもので心地良かった。
午前9時過ぎに学会場に到着すると、すでに多くの先生たちが集まっている。毎回学会に参加して感じることは、安全で回復の早い治療が脚光を浴びていること。今回、僕は当クリニックで人気の“サーマクール”についての発表を行った。発表内容を簡単にまとめると、次のようになる。
“これまで顔のたるみを改善するにはフェイスリフトしかなかった。しかしフェイスリフトはメスを用いる本格的手術なので、この治療に踏み切るには相当の覚悟がいる。理由は術後の傷跡の問題や回復までの時間の長さ、そして内出血や感染など合併症の心配がある。すなわち、一部の勇気ある人たちを除いて、大半の人はいざ手術となると尻込みしてしまう。サーマクールは手術ほどの劇的な効果は期待できないが、それに準じた効果が得られる。また、サーマクール治療中の痛みは、ブロック麻酔で大幅にやわらげられるようになった。”
同じ考え方で行われる治療には糸を使ったリフトもある。糸を使ったリフトも、やはりフェイスリフトほどの効果がないが、安全に行えるという面で今後期待が出来る。学会のメインイベントはフェイスリフト症例を多く経験した医たちの討論であった。結論は画期的な治療結果を望む場合、フェイスリフトに勝る治療はない。しかし、この治療を受けるかどうかは治療を受ける側の患者さんの意向による。今後の傾向として、日本人は“誰に知られることなく、少しだけ変わる。”のが好きなので、今メスを使わない治療が主流になるということだった。

青色発光ダイオード
もう一つ大変興味深かったのは青色発光ダイオードを発明した四国出身の工学博士、中村修二氏の講演だった。青色発光ダイオードは携帯電話を始め、ありとあらゆる家電に用いられ、今世紀を代表とする発明の一つに挙げられる。通常の場合、光を作ると熱が発生するが、青色発光ダイオードはほとんど熱を出さずに発光するのでエネルギー効率がとても良い。だから、携帯電話も小さなバッテリーでも長時間長持ちするようになった。彼の成功の秘訣は“常識を打ち破って、自分の信じる道をあきらめないで邁進すること。”に尽きる。残念ながら我々一般人は都合の良い理由を見つけては、物事を簡単にあきらめてしまうことが多い。しかし、そういう姿勢では人は成長も、社会に貢献することもできない。日々の診療からちょっとだけ離れて、異なる世界で活躍する人たちから刺激を受けることで、新たなやる気がわき起こる。それだけでも学会に参加する価値は十分にある。