2006年4月19日水曜日
アンチエイジング診療の外−16(車の弊害)
ベンツとヴイッツ
僕はあるときから車を運転することを完全に止めた。東京で勤務医をしていた頃、自宅と病院のある港区内で車を乗り回していた。その頃仲良くしていた周りの仲間の影響もあり、都内で車に乗ることが“イケている”ように思っていたのだ。そういっても、僕はあまり高級車にこだわる性格ではなかったので、トヨタのエコノミーカーの代表、ヴィッツに乗っていた。ある時合コンに出席すると、ある女性が男性陣に「車は何に乗っているの?」という質問をした。僕は一番端の席に座っていたのだが、男性陣は中央の席から順番に車名を言った。口から出るその車名は皆見事に「ベンツ、ベンツ、ベンツ」と3人とも高級車で並んだ。最後の順番の僕は「ヴィッツ」と言うと、皆が一斉に笑った。僕が冗談を言っていると思ったのだろう。その女性が「ベンツですよね?」と再度聞いてくるので、僕は「いいえ、トヨタのヴィッツです。」と答えると、今度は「へー、そうなんだ!」と驚きを隠さなかった。多分、彼女は医者であれば、僕の友人たちと同様、ベンツに乗っているのが当然だと思ったのだろうが、それは間違い。僕のようにベンツに乗れるほどお金持ちではない医者もいるのだ。
車にまつわる嫌な想い出
この頃の僕の体調は決して万全とは言えなかった。特に朝出勤に車を使うと、どうも体が重たく仕事を気持よくすることが出来なかった。その頃は体調が優れない原因が運動不足のせいだとは全く気がつくことなく過ごしていた。開業を意識するようになってから、少しでも開業資金を多く蓄える必要があることに気がついた。僕はあまり倹約家ではなかったので、すぐに開業するだけの十分な資金はなかった。まず、最初に考えたのは車の売却だ。その頃は友人の影響で、僕はトヨタの高級車”ソアラ”をローンで購入して乗っていた。しかし、都内で車を乗り回すことの無意味さに気がついたのと、まだ価値のあるうちに売れば、開業資金を増やすことが可能となる。さらに、車にまつわる嫌な思いがあまりに僕に多すぎたせいもある。六本木や銀座で用事があると、車で出かけて路上駐車をしていたのだが、いつもヒヤヒヤしていた。ある時、ついに止めていた車がレッカーで持って行かれてしまった。違法駐車をしてレッカーされるなんて、全くばかばかしい話だが、しばらくすると今度は銀座で買い物をして車に戻ると、違反様の黄色いステッカーがつけられていた。僕は性格上、このようなトラブルに巻き込まれやすいらしく、東京のような大都会で車を所持することは出来ないと判断し、思い切って車を売ることにした。実際に車を手放しても何の支障も来さなかったし、警察に違反切符を切られるストレスを考えると、車がなくなってせいせいした。
歩きながら開業への意欲が湧いた
車を運転していた時は、事故や警察に捕まらないことばかり考えて、とてもストレスとなっていた。ハンドルを置いて公共の乗り物を使い始めると、歩きながら色々なことを考えれるようになった。毎日の通勤途中、坂道にある長い階段をエスカレーターを使わないで上り下りしながら、往復20分を歩いていると、車に乗っていたときのような憂鬱な気持がなくなっていた。朝は特にそうだった。歩きながら仕事に向かう方が、がぜんやる気が湧いた。開業に向けて必要な準備や集中力も、この時間に歩きながら考えると身に付いてきた。何しろ、歩きながら物を考えていると創造力が湧いてくる。そういえば高校時代、成績が常にトップで、ストレートで東大理学部に合格した友人も、歩きながら数学の問題を考えていると聞いたことがある。「よし、開業するぞ!」と決心出来たのも、車のハンドルを置いた後、体調が良くなってからだ。肉体的な健康は精神的タフさややる気、集中力と直接的に関わっている。もしあの時、車に乗り続けていたら、開業にまで漕ぎ着けなかった可能性がある。今でも僕は地下鉄と徒歩で通勤する毎日で健康を維持している。これから先、万が一車を所有する余裕が出来たとしても、都内で車を所有するのだけはまっぴらごめんだ。
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